こんさる雑記帳

コンサルタントとして日々の仕事の中で考えたこと、二児の父として毎日の生活の中で思うことなんかを雑にまとめていこうと思います。

ロイヤル顧客への値引きは正しい?

ナルミヤ・インターナショナルからこんなインビテーションが。

 

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ナルミヤ・インターナショナルは子供服メーカーで、メゾピアノ・センスオブワンダー・クレイドスコープ・X-girlなど人気子供ブランドを多数傘下に持っています。

 

ちなみに今回のインビテーション、差し出し元が普段使っている傘下ショップ名義ではなくナルミヤ名義になっているにも関わらず、普段利用する百貨店内の傘下ショップにお越し下さいとなっていたので、どういう仕組みか分からなかったので直接店員さんに聞いてみたら「店は通常営業なのですが、インビテーションをお持ちのお客様だけレジで⚫︎割引になるんです」とのこと。

 

通常、ファミリーセールは別会場で開催されることが一般的で、かつ商品もその時店舗に置いてある商品と異なる(少なくともそう誤解させる)ブランドが多いですが、この方式であればいつも行く店で、その時点の最新商品を特別価格で購入出来ます。

 

 

娘・息子の名前を覚えられ、店長の異動のタイミングでは引き継ぎのご挨拶を頂ける程度まで貢いだ(娘に)甲斐があるというものです。

※まぁただこの程度(年間数万円)でVIP扱いという事実に子供服のツラみを感じます

 

 

1人のロイヤル顧客としてはありがたい限りですが、一方でロイヤル顧客に金銭的インセンティブを与えることが最も良い方法論なのか、という点にはやや疑問があります。

 

 

というのもロイヤル顧客は価格と品質のバランスに特段不満を持っていないからです。だからこそロイヤルなわけです。

 

そういったユーザーに対してセールをぶつけると単純な単価ダウンにもなり兼ねませんし来年はセール待ちの買い控えも起こしかねません。

 

そういうことも考えると、ロイヤルユーザーに対しては金銭的インセンティブ以外の方法論の方が良いのではないでしょうか。

 

むしろロイヤルユーザーになる一歩手前のユーザーに対して「あなたは特別なお客様ですよ」という意思表示をする意味も込めて金銭インセンティブでロイヤルへ引っ張り上げることの方が重要ではないかと思うのです。

 

まぁとは言え、せっかく頂いた権利なので、しっかり使わせて頂こうと思います。

スマホと3S

スマホの登場によって、それ以前の時代よりも圧倒的に便利になりました。

 

昔であれば携帯電話(その前はPHSやベル)、音楽を聴くためのWalkmanゲームボーイ、雑誌や本、新聞あたりをカバンに入れなければならなかったのが、今であればスマホ1台で済みます。

 

電車を見渡せば7割方の人はスマホを見ています。特に多いのがSNSスマホゲーム。

 

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モバイルからのインターネット接続時間が世界でも最も短い国の一つとは思えません(データの取り方に問題がある気が)。

 

まぁそれはそれとして、スマホは便利な機器ではありますが、一方で人間をダメにしていっているような気もします。

 

誰でも簡単にエンターテインメントにアクセス出来るということは、しっかりとした自制心を持たなければダラダラと時間を無為に消費するだけになるからです。

 

 

 

3S政策という言葉をご存知でしょうか。

 

SPORTS、SEX、SCREENの略で、これらを積極的に勧奨することで、民衆の政治への興味や関心を削ぐ、あるいは不満を解消させるといういわゆる愚民化政策で、あくまで仮説ではありますが戦後の日本やナチス政権下のドイツで行われていたと言います。

 

真偽のほどは別としても仮説としては極めて納得感のある話で、この3Sと極めて親和性が高いのがスマホであることを考えるとスマホの普及はそのまま意図しない3S政策を推進することになるのではないでしょうか。

 

 

スマホを見ていれば頭を使わずにダラダラと時間を過ごすことが出来ますし、スマホで調べれば自分で考えることなく正解らしい情報やその領域に詳しそうな人にすぐアクセス出来る時代。

 

私も含め、昔の人の多くがしていたであろう「ぼんやりと考える時間」はどんどん減っているのではないでしょうか。

 

 

「人間は考える葦である」というパスカルの言葉を噛みしめた方が良いのかもしれません。

 

 

 

 

 

ノルマの何が悪い?

日本郵政グループが揺れていますね。

 

発端になったのは夏にメディアを騒がせたかんぽの不正販売問題。顧客に不利益をもたらすような販売をしていたっていう話ですね。

 

それに対して、日本郵便はなぜか物販のノルマを廃止する方針を打ち出していました(にも関わらず実体としてはまだ残っている、というのも叩かれていますね)。 

www.nishinippon.co.jp

 

ちなみに最近金融庁長官が各金融機関に過剰なノルマを見直すとともに、営業ノルマ以外の目標設定を提案。

www.sankeibiz.jp

 

東芝の"チャレンジ"問題の時と同様、過酷なノルマが悪い…みたいな論調になっているメディアが多いように感じますが、これは単純なパワハラの問題であり、ノルマ問題は論点のすり替えにしか見えません。

 

 

ノルマというとネガティブな印象を持つ人が多いですが、ポジティブな言い方をすれば数値目標です。営業部門において数値目標が無いなんてあり得ません。

 

 

特に全国で多数の営業人員を抱える組織において最大の論点は「意識レベル・モチベーションの低い人材をどうパフォームさせるか」です。日本は海外と異なり解雇が実質的に出来ないため、海外であればクビになるような人材(ローパフォーマー)もうまくモチベートさせながら一定以上のパフォーマンスを出さなければなりません。

 

 

放っておいてもモチベーション高く働く(であろう)国家公務員のキャリアとは人種が違うわけです。そのために必ず必要になるのが、アメとムチ。すなわち目標と成果報酬です。

 

 

にも拘わらずなぜここまでノルマ=悪というような構図にされてしまうのでしょうか。

 

個人的には昨今の働き方改革コンプライアンス強化含めて、企業の競争力を削ぐ方向にしか進んでいないように思います。もちろんこれらは推進すべきですが、解雇規制の緩和とセットであるべきです。

 

パフォーマンスの悪い人間をキックアウト出来る形にすれば、放っておいても企業は優秀な人材の確保・定着のために環境整備をするでしょう。厳しすぎるノルマや恫喝なんて不要になります。

 

 

若い世代のためにも、早くこのあたりに手を付けて頂きたいものです。。。

マッシュホールディングス②

昨日に引き続きマッシュホールディングスの好調要因仮説を。

 

昨日の①・②が圧倒的なポイントだと思うので、下記はあくまでもサブな位置付けではありますが。

 

 

③商品企画力

最近のアパレルは期中企画と呼ばれる流行後追い型生産(これを極めているのがH&M)が少なくなく、結果としてどこも同じような商品を並べるというのが一般化していますが(特にセレクトショップと低価格で顕著)、マッシュホールディングスは後追いはしないというスタンスを徹底しています。

 

他社と違うものを求めるユーザーに対してはこのスタンスがとても重要です。

 

④自社EC

ZOZOをはじめとするプラットフォームに依存せず、自社のECモールを別会社で運営させています。

 

一見、昨今のOMOの流れと相反するように見えますが、これもメリットがあります。それは店舗が売り切ろうとすること。

 

易きに流れるのが人間の本質でECに流せば良いとなるとそうなってしまうのが普通ですが、あえてそうせずに店舗に売る力を求めるというのは各社がOMOに走っている今だからこそ重要な視点です。

 

また収益性、CRMの観点から見ても絶対的にメリットがあります。

 

SNS運用

SNIDEL、gelato pique、Mila Owenはインスタでフォロワー30万人越え、FRAY I.Dが20万人越えです。

 

MOUSSYやSLYには劣るものの、立派な数字です。ちなみにUAが29万人、SHIPS10万人。

 

SNS(特にインスタ)が雑誌的な役割を果たす中でフォロワー数とは雑誌の発行部数に匹敵するものです。

 

ファッション誌が軒並み20万部を切る中で、インスタフォロワーは認知・想起を獲得する上で非常に重要です。

 

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⑥時流

やや①の話と被りますが、大きなトレンドで言えば、今はヨーロピアンカジュアルのトレンドだと言えると思います。

 

女性向けのチェスターコートを目にすることが増えたりオーバーサイズのコートが流行したりする一方、襟口にボアが付いているようなエレガンスなデザインが減っていることも一つの象徴ではないでしょうか。

 

この時流にSNIDELやMila Owenなどのヨーロッパ風のエレガンスな雰囲気を残したカジュアルスタイルがカッチリハマっているように思います。

 

 

今は時流や時期が噛み合ったことで非常に良い流れが作れているように思いますが、移り変わりの早いレディースアパレルにおいて、どのように変化に適応していくのか引き続き注目していたいと思います。

 

マッシュホールディングス①

今、アパレル業界で最も気を吐いているのがマッシュホールディングスでしょう。

 

gelato pique、SNIDEL、FRAY I.D、Mila Owenなどを主力とするファッション事業に加え、Cosme Kitchenなどのビューティ事業、フード事業など幅広く展開している企業です。

 

どうでも良いですが、ファッションブランドが全部サッカー選手の名前に酷似しているのはなんでなんでしょう。ジェラール・ピケスナイデル、フレイ、オーウェン

 

売上は右肩上がり。ルミネ新宿のSNIDELのリニューアルでは初日1日で1,875万も売ったとか。凄すぎる。

senken.co.jp

 

なぜここまで好調なのか。残念ながら男性なので商品への見立ては誤っているかもしれませんが、私なりの仮説を。

 

 

①ポジショニングが絶妙

マッシュホールディングス傘下ブランドの価格帯は決して安くありません。セレクトショップ全盛期のビームスユナイテッドアローズ、あるいはいわゆるマルイブランドの価格帯です(今の若い人には分からないかも)。

 

実はこの価格帯ってエアポケットのようになっている感覚で、低価格は超レッドオーシャン、従来このゾーンにいたブランドが上に単価を切り上げるとともに、従来の単価ゾーンにはOEMベースのPBを張ってしまったため「カチッとした場面でも着られるけど手が届く、でもオリジナルなデザイン」というところが空いてしまった。

 

今割と調子が良い(と思われる)ブランド…MOUSSY/SLY/ENFOLD/MHLなども大体このゾーン。 

 

なのですが企業としてみた時、アパレル企業の多くは価格帯をマルチにしており、上下価格帯が売上・営業利益にネガティブな影響を及ぼしているのではないでしょうか。

 

マッシュホールディングスにはそれがなく、基本的にこの価格帯。これが大きな要因だと思います。メンズで言えばSTUDIOSのTOKYOBASEも同様です。

 

 

➁立地

①の結果なのか、立地が先行して➁なのかは分かりませんが、立地も厳選されており、基本的には大規模ターミナル駅の駅近ファッションビル。

 

百貨店と郊外SCが沈みゆく中で、唯一強いのが駅からアクセスの良いファッションビル群であることは間違いありません。

 

どのブランドもルミネやパルコなどの一流ファッションビルばかり出店しています。店舗一覧を並べれば一目瞭然。

 

これらファッションビルユーザーは百貨店ほどの単価は出せない(出したくない)が、おしゃれが好きなユーザー層のはずで、これに①のポジショニングががっちりハマっているのでしょう。

 

 

 

明日に続きます。

 

 

 

 

効果を体感させる

マッサージに行きたい時にはRe.Ra.Ku(以下りらく)を利用する場合が多いのですが、1番の理由は効いてる“感”があるからです。

 

この効いてる“感”というのが大事なポイントです。基本的にマッサージに行けば気持ち良いのは当たり前で(もちろん技術の差という意味での当たり外れはあれど)、それだけでは顧客に特別な印象を与えることは難しいわけですが、りらくでは一手間加えることで特別な印象を与えています。

 

それは、施術前と施術後で、前屈や両手を背中に回した際の手の距離(右腕は上から、左腕は下からのイメージ)を測り、定量的な効果を見える化していること。

 

施術前と施術後で明らかに数字が変わり、それとともに専門的知識で話をされるので納得感が違います。実際には前屈なんて1回目より2回目の方が基本的には良くなりますし(施術の有無関係なく)、どこで施術を受けようが変わらないとしてもです(実際てもみんでやっても良くなるはず)。

 

なぜてもみんやQUEEN'S WAYでやらないのか不思議で仕方がありません。

 

 

同様に最近一気に普及が進んでいるQR決済も決済が終わった瞬間に還元される金額が出てきます。

 

実際にはクレカを使ってもQR決済を使っても還元率は変わらなかったりするわけですが、これも効果を体感させ、代替品であるクレカやスイカからシェアを削るという意味において、UX上非常に有用な仕掛けと言えるでしょう。

 

 

サービスや商品の効用というのはどこまでいっても顧客が感じたものが全てであり、スペックで定義されるものではありません。

 

 

コンサルティングサービスも同様です。

 

極論、数字がめちゃくちゃ上がっていても(もちろんそれは最も分かりやすい効用の一つではありますが)、それがコンサルティングを受けた結果だとクライアントが感じていなければ契約を切られることもありますし、逆に成果が上がっていなくても「コンサルティングを受けた結果この程度で済んだ」と感じてもらえれば契約延長となることも少なくありません。

 

いかに効果を体感してもらうかという点には常に意識を向けておきたいものです。

水木しげるロード

引き続きの鳥取県ネタですが、鳥取県を代表する観光地であり、地方商店街の活性化事例として水木しげるロードがあります。

 

境港出身でゲゲゲの鬼太郎および悪魔くんの著者である水木しげる氏全面協力の元成り立っている商店街ですが、地方商店街の活性化事例として学ぶべき点が少なくないと思っています。

 

直近の観光客入込客は274万人。前年比30%アップ。ピークは350万人超だったことを考えればダウントレンドであることは否めませんが、それでも鳥取県を代表する観光地になっています。

(先日記載した通り、鳥取砂丘は300万人であり、勝るとも劣らない数字)

 

 

再現性の問題はありつつも、人気を博している理由を挙げてみると

 

①強力なコンテンツ

ゲゲゲの鬼太郎がどこまでコンテンツとして強力なのかというのは議論の余地はありますが、とは言え観光客を引き付ける要因になっていることは間違いありません。

 

②①を低コストで調達出来たこと

水木しげる氏への著作権料の払いはゼロ。水木しげるロードの観光の目玉でもある妖怪像はスポンサーを募りかなりの低コストで調達出来ています。

 

③行政のコミットメント

銅像もそうですが、妖怪影絵や目玉のオヤジの街灯など、行政が強いコミットメントをし、盛り立てようとしています。反対意見もあったでしょうが、押し切った行政が素晴らしい。

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④商店街を巻き込めたこと

実際に行ってみて素晴らしいなと思った一番の理由がコレです。商店街の店舗一軒一軒は通常個別最適になり、似たような土産物屋が軒を連ねるのか一般的ですが、水木しげるロードの店舗は各店が既存の商売の延長線上で展開しており、それぞれに個性があります。

 

また鬼太郎をモチーフにした商品開発も、通常であれば「売れないから嫌だ」となるところですが、商店街全体最適を前提に各店が盛り上げています。

 

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こんなの絶対売れないだろうに。

 

 

以前も全体最適でなければ観光地の活性化は難しいというエントリを書きましたが、まさに全体最適な視点で活性化している良い事例ではないでしょうか。