コスパ競争を回避せよ
昔よりもコスパという言葉を頻繁に耳にするようになりました。
外食産業ではコスパ全盛で、各企業ともコスパの向上に励んでいます。いち消費者としては嬉しい限りですが、このコスパ競争は企業としては本来回避すべきものです。
そもそもコスパとは?
コスパを数字で定義するなら価値÷価格という形になります。価値に比例し、価格に反比例していくものです。
が、気を付けなければならないのが、価格と価値ではコスパに与える影響が異なる点です。価値は一定レベルを超えると価値向上を感じる客が減少していくため、結果的に価格に引きづられやすくなります。
つまり最終的には価格が下方で硬直しコストが高止まる、業界参加者全員が不幸な形になってしまいます。
コスパ競争に陥りやすい業界
ではなぜコスパ競争になってしまうのかというと、端的に言えば供給者側のセリングパワーが弱く、需要者側にとって代替の選択肢が沢山あるからです。よって、そもそもコスパという概念が出てきやすい業界とそうではない業界があります。
典型的には、外食・旅行・消費財ですね。顧客側にとって複数の選択肢があり、かつ顧客側もその商品/サービスの経験を複数重ねています(違いに気付く"目"がある)。
外食についてはさらに新規参入が多いため悲惨です。
逆にセリングパワーの強い業界ではコスパ競争というものは起きづらいです。商品/サービスの売り手と買い手の情報格差が大きかったり、生涯1回しか買わないような商品などがこれにあたります。葬祭業や金融系商品、不動産などが代表格ですね。
コスパを切り口に攻めようとする企業もありますが上手くいっていません(そもそもコスパを理解できるほど顧客が情報・経験を持っていないので)。
コスパ競争を回避するには
一番良いのは価値の軸を変えることです。
例えば外食の場合、商品やサービスのクオリティという価値ではなく、体験という軸に移す、というのが一つですね。典型的なのはBBQ・ロボットレストラン・5Dなどの"体験"にシフトするというものです。
とは言え、なかなかそう簡単にも行かないとは思います。特に既存店舗はそう簡単に変えられるものではありません。そういった場合にはターゲットを絞るという形がベストだと思います。
というのも顧客によってコスパの感じ方は異なるからです。
例えば単価4,000円の居酒屋をコスパが良いと評価できるのは普段から4,000円以上の予算の店を使っている層です。どれだけクオリティが良くても普段から3,000円の居酒屋に行っている層にとって「おいしいけど高いね」になります。
自店のコアユーザーが何を評価してくれてるのかを正しく理解した上で、そのコアユーザーが求める価値をとことん磨き込むことが大切です。そしてその価値は多くの場合、単純に商品の質では無いはずです。
コスパ競争全盛の今だからこそ、コスパ以外の競争軸を考えることが重要なのではないでしょうか?