欲しいものを分かっていない人々
この年末年始、2つの「オーダー」を体験しました。
1つがミシャラク。
ミシャラクのパティスリーが都内表参道原宿に上陸 チョコレート、ケーキ、スイーツ | MICHALAK PARIS
パリから一昨年表参道に進出したパティスリーで、AIの質問に答えると今の気分にピッタリな組み合わせを提案してくれるコスミックというスイーツが昨年も様々なメディアで取り上げられていました。
早速妻が試してみたのですが「ピンと来ない」とばっさり笑
結局店員さんに聞いてベタな組み合わせで一件落着。AIに回答するためのiPadの横にも人気組み合わせランキングが書かれていました。妻みたいな人は決して少なくないのでしょう。
味は思ったよりも美味しかったですが、オーダーで、ましてやAIで自分好みを作るというのはなかなか難しそうだという感想。
そもそも選択肢が1つしか出ないので、判断しやすいというのがあるかも知れません。選択肢を3つくらい出せばその中から選ぶのでしょうが。
もう一つがオーダースーツのdifference。
オーダースーツブランドDIFFERENCE(ディファレンス)
コナカ系列のオーダースーツ専門店でアプリからも注文出来ます。
スーツをオーダーで作るのは初めてではありませんが、どこでオーダーする時も生地やボタンを選ぶ以外の細かい寸法の調整は自分ではよく分からないので結局店員さん任せ。
今回も例外とはならず言われるがままになりました。そもそもサンプルを着ながらここは1cm短くしますねと言われても多くの消費者はピンと来ないわけです。
結局のところ、出来たものに対して良かった悪かったの判断をする域を出ません。だとすると現物を確認できる吊るしの方が良いのではという気もします。
この2つの事例から感じるのは欲しいものを具体的にイメージ出来ない消費者にオーダーを求めるのは難しいということ。そもそも意思決定を消費者に委ねれば委ねるほど、購入に関する意思決定コストが増すので面倒くさいな、となりがちです。
(行動経済学で言う決定回避の法則が適用されるイメージです)
スティーブ・ジョブズは「消費者は欲しいものなんて分かっちゃいない。具現化して初めてこれが欲しかったと言うのが消費者なんだ」というような主旨の発言をしていますが、まさにその通りであり、どんなビジネスに関わっていても意識しておくべき視点だと思います。
年末年始のテレビ欄に見る変化
あけましておめでとうございます。
年末年始は特段遠出もせず、都内近郊をフラフラしつつ、基本は実家でゆっくり過ごしていたため、テレビを点けていることが多かったのですが、今年の年末年始のテレビ欄に違和感を覚えました。
というのが昔の人気ドラマの全話一気再放送や人気番組の再放送や総集編ばかりで、生放送や新規特番がほとんどなかったからです。
全部を観たわけではありませんが、今覚えているだけでも「逃げ恥」「99.9」「アンナチュラル」「義母と娘のブルース」「ノーサイドゲーム」etc。
よく考えれば全部TBSですね笑
ただそれ以外のチャンネルもバラエティの再放送が目立ちました。
以前であれば色んな芸人が沢山集められて生放送でワイワイやったり、年末年始だけで何回このネタ見せられなきゃいかんのかというくらいお笑い芸人が各局の特番に出ていたわけです。
が、今年はそれもほとんどなく、ミルクボーイのネタですら、全然見かけない始末。
この背景には2つの大きな変化があるのではないかと思っています。
1つが働き方改革の流れ。年末年始まで働くというのがテレビ局ですら難しくなりつつあるということがあるように思います。
テレビ局の人達はワーカホリックなので、もちろんそれなりの手当てを付ければ働かせること自体は出来るでしょうが(知人の某局ディレクターは31日の朝方頃まで働いてましたし)、大きな流れとしてはそうもやっていられないということなのでしょう。テレビ局の多くが上場していますし。
2つ目がリスクの問題。
上記背景もある中で膨大な予算で新規特番を作っても、視聴者にとって面白い/期待できるコンテンツかというと別の話。
そこでリスクを取りに行くよりも、人気があったコンテンツを再度擦る方がリスク低く一定の視聴率が望めます。実際、TBSで再放送されたドラマは放映当時から人気だった作品です。
特に最近は小売も年末年始は休むところが増えている=自宅でテレビ前にいる人が増えている中で、変にリスクを取って、ネットフリックスなどの配信サービスに流れてしまう方が脅威でしょう。
(実家で子ども世代がネットフリックスを親世代へ教えてしまうリスクもある)
ちなみにこの流れ、しばらく前からあるようでアンナチュラルや逃げ恥は昨年もやってるんですね。それでかなり視聴率が取れたから広げたということなのでしょう。
とすると来年以降もこの流れは止まらないのでしょうね。視聴者としてもそちらの方がありがたいはありがたいのですが、さして面白くもないあの年末年始特番が消えてしまうことに少し寂しい気がするあたり、本当に年を取ったなぁと感じた2020年の正月でした。
良いお年を
本日で業務終了ということで、1月6日まで記事の更新は休みます。
今年を振り返りつつ、来年のことをゆっくり考える1週間にしようと思います。
それでは皆様、良いお年を。
書店について考える②
昨日の続きです。書店はamazonをはじめとするECの攻勢を受けつつ、さらには書籍に変わる代替品(スマホを通した様々なコンテンツなど)にやられており、かつ再版制度により価格をいじることが難しい、ハタからみればかなり厳しい業界です。
そのような業界において、どんな戦い方があるのか、現在ADRで再建中の文教堂のIRを見ながら考えてみます。
http://www.bunkyodo.co.jp/company/date/tanshin20191015_03.pdf
超ざっくりした見方ですが、原価と雑給を変動費としてみなすと変動費比率81%ほど。雑給除いた販管費52億を固定費としてみなすとBEPは273億強。
変動費比率は与件として動かせないとすると、今より売上を10%近く上げなければなりません。これはこの業界の置かれている環境下では絶対無理というレベルの数字。
ここからは数字の裏付けがないので、ただの妄想にはなりますが私としての仮説です。
①都心部は捨てる
BEP引き下げのため、固定費を下げる必要があります。一番は家賃。
個店のPLが見えませんが、どう考えても都心はシンドイ。賃料が高騰を続け、本を買わない若年層が多い。成立不可なので切り捨てます。
実際、文教堂に限らず、最近の閉店店舗は都心部が多くなっています。これは正しい流れ。
②地方都市はコミュニティの起点にする
地方都市の方が可能性があると思っています。というのもシニア層のコミュニティが存在しないから。スーパーやゲーセンやスーパー銭湯にタムロしているシニアは取り込む余地があると思います。
固定費の観点でも地方の方がベターです。書籍を買うコア層は中高年であるため、売上拡大の可能性は都心部より高いと思います。
③書店の強みを活かす
売上を上げるための最大のポイントがこれ。強みを活かすこと。
書店の強みはスタッフが本を愛していることです。普通の人の何倍も本を読んでいます。
書籍はあまりに種類がありすぎる故、消費者にとっては自分にあった書籍を見つけるのが難しいという欠点があります。しかも書籍の中身をAIで解読しリコメンドするのは現時点では不可能で、あくまで購買情報を元にしたリコメンドしかできません。結果、売れている本がおすすめされることになります。
顧客ごとの好みを把握し、好きと思われる書籍をオススメする。これはまだAIよりも人間が優っている部分だと思います。
実際、この強みを活かして話題になっている書店があります。
これ、本当に素晴らしい取り組みで、もっと広まるべきだと思うんですけどね。他の商材でも転用可能なはず。このモデルが作れればAmazonに対抗することも出来ると思います(言い過ぎですが)。
というわけで書店について考えてみました。個人的に本は好きですし、書店も好きなので業界の頑張りに期待したいと思います。
書店について考える①
ちょっと古い記事ですが、六本木の青山ブックセンター跡地の書店が入場料を取るモデルに変えた結果めちゃくちゃ繁盛しているという話。
日販、入場料を取る書店が大入り「本はまだ売れる」:日経ビジネス電子版
入場料1,500円でコーヒーは飲み放題。
私自身、オフィスでなく外で仕事をすることが好きなのですが、そのテのいわゆるノマドにはありがたい業態です。
(まぁそれでも高いので頻繁に使うことはないでしょうが)
が、これが本質的に書店の危機を打開するものかというとそういうことではないでしょう。
この業態は書店ではなく、言うなれば知的漫画喫茶、あるいは非会員制コワーキングスペース。本が好きで集まるというよりも、スペースを求めてくる人の方が多いのではないでしょうか。
もちろんデザイン関係などクリエイターが書籍を見ながらというのもあるとは思いますが、出店可能な商圏がかなり限定されてしまいます。
また本屋でありながら空間で戦うというコンセプトはこれまで成功例がありません。
心地よい空間を作り自由に書籍を読んでもらうというコンセプト(蔦屋書店の原型とも言えますね)で一時期もてはやされたBarnes&Nobleのその後を見ても、いかに苦しい戦いになるかというのは想像に難くありません。
まぁ強いて言えばBOOK AND BEDでしょうかね。
ただ、これも書店の発展系というよりはホテルの発展系であり全国に17,000軒超もある書店ビジネスの解とはならないばかりか、大都市圏の宿泊需要があるエリアでなければ厳しいでしょう。
BOOK AND BEDも赤羽のオープンから5年ほど経つかと思いますがまだ6店舗に留まっています。
では書店というビジネスの解としてどんなことが考えられるのか、明日、私なりの仮説を書き下してみようと思います。
結局、愛
今日はクリスマスイブですね。
皆さんいかがお過ごしでしょうか。
我が家はサンタさんへのお供えがされており、腹いっぱいではありますが、せっかく娘がサンタさんのために作ったクッキーなのでニヤケながら食べつつサンタ業務を全うしようと思います。
ちなみにクリスマスの経済効果、いくらかご存知でしょうか。一般には7,000億円とか8,000億円と言われています。信頼出来そうな機関の推計はサクッとググったレベルだと第一生命経済研究所の2005年まで遡らないと出てこないのですが、波及する業界が大き過ぎて推計が面倒ということなのかもしれません笑
ちなみにvisualizing.infoによればクリスマスケーキだけで300億弱ですから、プレゼント、外食、旅行、イルミネーションに絡む外出などを含めればまぁそんなもんかなという印象です。
他の大きなイベントは日本記念日協会が推計値を出しており、いずれも2019年でバレンタインデー1,260億円、母の日1,205億円、ハロウィン1,155億円、ホワイトデー490億円ですから圧倒的とも言えます。
なぜここまでクリスマスの市場規模が大きいのでしょうか。
①動くプレゼントの数と単価
これが圧倒的に一番でしょう。恋人であればお互いに送り合いますし、子どもであれば色んなところ(祖父母、叔父、叔母etc)からプレゼントが送られてきます。
動くモノの数が圧倒的に違います。これは他のイベントにはない特徴です。加えて単価が高いということも挙げられます。
②波及する業界の多さ
イルミネーション等による人の移動が発生すること、ホテルや高級レストラン、旅行、中食など小売以外の様々な方向に波及するというのも他のイベントにはない特徴です。
そう考えるとクリスマスが圧倒的なのも納得なんですが、個人的には驚いたのが母の日です。
イベントとしては地味ながら市場規模はバレンタインデーに勝るとも劣らない数字。
よく考えれば、子どもの数だけプレゼントが動きますし、大人になってからは単価も高いでしょうから、実は小売だけを考えればクリスマスに近しいポテンシャルがあるのかもしれません。
一方で父の日は母の日の半分以下。構造的には母の日と同じなのに。ツライ。
いかに母への愛が強いか(父への愛が弱いか)ということですね。
プレゼントの値段と愛の大きさは比例しないと思っていましたが、こうやって考えると意外と比例しているのかもしれないですね笑
皆様も良いプレゼントがもらえますように。
クリスマスカード売れば良いのに
気が付けば年の瀬。一年は早い。
年賀状の季節ですね。と言っても私は一切年賀状を書かない主義なので、あまり関係はありませんがw
最近年賀状関連のCMは増えており、昨年は色々な災害があり改めて繋がりの大切さが見直されただの、令和初だから今年は書く人が多いだの言われています。
が、年賀状の発行枚数は完全に右肩下がり。
まぁ当たり前ですが。
年代別に見ても20代では57%、30代・40代では35%が出さないと回答しています。
別のソースによれば、年齢が上に上がるほど、年賀状を書かないという人は減りますし、書く枚数も多くなる傾向にあるようです。
この層がどんどん減っていくことを考えると年賀状自体は若年層を取り込む以外に回復(というか衰退を緩やかに)する方法は無いわけですが、年賀状は相当難しいだろうなという印象です。
以前も触れた気がしますが、大原則として文化は不可逆。やらなくなったことを再度やらせるというのは極めて難しく、それならば新たな文化を作っていく方がむしろ簡単かもしれません。
そこで一つ参考になると思う事例がバレンタインデーです。バレンタインデーはご存知の通り、女性が意中の男性にチョコを渡すというイベントだったわけですが、友チョコ(女→女)、逆チョコ(男→女)、ファミチョコ(→家族)、ご褒美チョコ(→自分!!!)など新たな文化を定着させようと様々な手を打っています。
実際定着した感があるのは友チョコくらいな気がしますが、もし何もしていなかったら、バレンタインデーは大きく盛り下がっていたはずです。
日本郵政も同様に、年賀状=新年に送るもの、という解釈にとらわれ過ぎず、紙で友人とコミュニケーションを取るという解釈にすればもう少し様々な可能性があるのではないでしょうか。
例えばクリスマスカード。
クリスマスはご存知の通り、カップル以外盛り上がらない日として有名ですね(一般に、居酒屋など大衆的な飲食店は軒並み売上が下がる日です)。 有名なクラブイベントとしてはSABISHINBONIGHT 2019がありますが、当然ながら大きなムーブメントには至っていません。
みんな暇だけどどこにも行く気が無くなる日ですし、クリスマスカードでやり取りしても良いんじゃないのと。喪中という概念もないし、年賀状と違ってデザインにも幅を持たすことが出来ます。
子どもがサンタさんに手紙を出す、あるいはサンタさん(というテイ)で子どもにクリスマスカードを贈るというのも需要あるでしょう(既にそういうサービスありますが)。
「年賀状はうずもれるから、おれはクリスマスカードを出す」というポリシーの上司が昔いましたが、そういうムーブメントの作り方でも良いかもしれません。
というわけで、クリスマスカードが良いかは別として(難しい理由は腐るほど挙げられますし)、どうせ無理な年賀状にCM投下して何とかしようとするなら若い子向けに新しい文化を作っていく気概を持つべきなのではないかと思った年の瀬でした。