変わらないことに注目する
人間に限らずあらゆる動物は種の保存のために報酬系が設計されていますが、この報酬系に関連した非常に有名な物質が快楽物質とも言われるドーパミンです。このドーパミンの分泌に関して、神経学者サポルスキー氏の実験が非常に面白いです。
猿にある作業をすることで報酬がもらえると覚えさせます。その作業はライトの点灯によって告げられるのですが、一番ドーパミンが分泌されるのは報酬をもらった時ではなくライトが点灯した時だったのです。報酬そのものではなく「報酬をもらえるという期待感」がより重要だということが分かります。
さらにもう一つ。この報酬を受け取れる確率を100%以下としたところ、100%の状態よりもドーパミンレベルが高まり、確率を50%にしたところ最大になったというのです。要は若干のギャンブル性があることが重要ということです。
この実験結果はあくまで猿のものですが、ギャンブル依存症やスマホゲームなどの例を出すまでもなく、人間も同様であることは容易に想像が付くのではないでしょうか。
このドーパミン分泌の性質はまだまだ活かせる部分があるように思います。
例えばインセンティブ設計。売上のXパーセントの報酬が入ると明確にされている会社も多いと思いますが、この実験結果を考慮するとあまり明確にし過ぎない方が良いのかも知れません。面白法人カヤックはサイコロ給を取り入れていますが、導入の背景は別としても、ある意味で合理的なのかも知れません。
実際私個人の実感で言えば分かりやすい報酬よりも、今年の成果によっては昇格できるかも知れないという時の方がモチベーションが上がりやすいです。
またこれは別の例ですが、ギャンブル性を営業に取り入れている店舗もあります。これも客からすればドーパミンが出る仕掛けです。古着という領域的に苦戦していることが予想されますが…。登場した時はそのユニークな仕掛けが注目されました。
人間という動物である以上、どれだけテクノロジーが発展しようと遺伝子レベルでの設計に抗うことは難しく、本質的な欲求は太古から現在に至るまで、そして今後もなかなから変わらないだろうと思っています。
短期的なトレンドや技術に目を奪われずに、変わらないことに注目することが重要なのではないでしょうか。